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【技術解説】Safariプライバシー強化と計測基盤の再構築 —サーバーサイドGTMとファーストパーティ化による実践的アプローチ

【はじめに:本記事の前提と位置づけ】

本記事は、2025年6月のWWDC(Apple世界開発者会議)で発表された情報や、関連する技術動向を基に、2025年8月時点で予測されるシナリオの一つを解説するものです。
Appleのプライバシー機能の詳細はリリース時に変更される可能性があり、本記事の内容は今後の公式発表によって変わりうることをご了承ください。最新情報の発表に伴い、本記事は都度内容を追記・更新してまいります。


2025年6月に開催されたWWDC(Apple世界開発者会議) を、みなさまはご覧になられたでしょうか。私は今回の発表に、Webマーケティングにおけるデータ計測のあり方が新たなステージへ移行する大きな可能性を感じています。本記事ではそのように感じた背景と、私たちが取るべき対策について解説します[1]

 

特に注目すべきは、Safariのプライバシー保護機能の強化に関する方向性です。
実は、現行のiOS(iOS 17以降)でも、Safariのプライベートブラウズモード利用時には、既知のトラッカーへの通信を制限する機能がすでに搭載されています。今回の発表が示唆しているのは、このプライベートブラウズ限定の機能が、将来的に通常ブラウジングにも拡大適用される可能性です。

 

これが実現すれば、従来のCookie制限(ITP)とは次元の異なる、より強力な制限が標準となる「新たな段階」に入ると言えるでしょう。この変化は、Webマーケティング活動において、以下のような事業リスクへの懸念を高めます。

 

💡プライバシー機能強化に伴う、想定される事業リスク

💭ROAS(広告費用対効果)の算出がより困難になり、正確な効果測定に影響が出る

💭従来のコンバージョン計測の精度が著しく低下する可能性がある

💭広告プラットフォームの自動最適化が機能不全に陥り、CPA(顧客獲得単価)が高騰するリスクがある

 

本記事では、このプライバシー保護強化の潮流がもたらす影響、特に多くの企業が利用するGoogleタグマネージャー(GTM)をはじめとする計測ツールが影響を受ける可能性について技術的観点から深掘りします。

その上で、企業が今後どのように計測アーキテクチャを再構築すべきか、具体的な実装アプローチを交えながら解説します。

 


■目次

第1章:Safariにおけるプライバシー保護の潮流と、既存計測アーキテクチャへの影響

第2章:次世代の基本方針:計測エンドポイントの完全ファーストパーティ化

第3章:具体的な実装アーキテクチャの比較検討

結論:次世代の計測基盤への移行は、待ったなしの経営課題です



第1章:Safariにおけるプライバシー保護の潮流と、既存計測アーキテクチャへの影響

 

今回の機能強化を理解するには、Appleのプライバシー保護機能を整理する必要があります。混同されがちな「ITP」と「プライベートブラウズ」は、目的が異なります。

ITP(Intelligent Tracking Prevention)

▼目的

ユーザーの意図しないクロスサイトトラッキングを防止する

 

▼主な機能

サードパーティCookieのブロック、JavaScriptで発行されたファーストパーティCookieの有効期間制限(最大7日、場合によっては24時間)

 

プライベートブラウズの機能強化

▼目的

ブラウザ利用の機密性を高め、デバイスに閲覧情報を残さない

 

▼主な機能

閲覧履歴・Cookie等を保存しないことに加え、近年ではリンクに含まれるトラッキングパラメータの削除(iOS 17〜)や、既知のトラッカーやフィンガープリント用スクリプトの通信遮断が追加されています

Appleはこれまでも、限定的な機能から標準機能へとプライバシー保護を広げてきました。今回の発表もその流れの中にあると考えると、プライベートブラウズの通信遮断機能が通常ブラウジングに適用される未来を想定し、今のうちから準備を始めることが賢明と言えそうです。


🔨技術的背景:トラッキングリストに基づく通信遮断とその拡大懸念

 

Safariのプライベートブラウズモードでは、現行バージョン(iOS 17以降)において、トラッカーと判定されたドメインリスト(Disconnect Meなどが提供するリストがベースとされる)を内包し、対象ドメインへのリクエストをブラウザレベルで強制的に失敗させる仕様となっています。

 

そして、WWDCでの発表は、この通信遮断機能が通常ブラウジングにも適用範囲を拡大する可能性を示唆しており、多くのWebサイトにとってのリスクはここにあります。


例えば、多くの企業が利用するwww.googletagmanager.comがこのトラッカーリストの対象となった場合、gtm.js ファイルへのリクエストそのものがブラウザにブロックされます。

その結果、GTMコンテナは初期化されず、その中に設定された全てのタグが機能不全に陥ります。これは、個々のタグを「実行」する以前に、その大前提であるGTMの「読み込み」が失敗することを意味します。

 

1.クライアントサイド・スクリプトの実行不能リスク

GTMコンテナが読み込まれないため、それに依存する全てのクライアントサイド・スクリプト(GA4、広告CVタグ等)が実行できなくなる可能性があります。

 

2.サーバーサイドGTM(SSGTM)へのデータ送信トリガーの喪失リスク 

多くのSSGTM実装は、Web GTMコンテナ内のGA4タグなどをトリガーとしてサーバーコンテナへデータを送信します。この起点となるWeb GTMが機能しない場合、SSGTMも連鎖的に機能不全に陥るリスクがあります。

🔎 一部の実装ではWeb GTMを介さず直接 /collect エンドポイントに送信するフォールバック設計も可能ですが、一般的な実装では影響を受ける可能性が高いと考えられます。


3.(ITPによる)ファーストパーティCookieの有効期間制限 

上記の通信遮断リスクに加え、ITPによる従来の制限も継続します。広告クリック経由で流入した場合などに、JavaScriptで設定されたファーストパーティCookieの有効期間が最大7日(または24時間)に制限されるため、長期的なユーザー分析やアトリビューション分析が困難な状況は変わりません。

第2章:次世代の基本方針:計測エンドポイントの完全ファーストパーティ化

 

こうしたリスクに備えるための本質的なアプローチは、「計測に関連する通信を、可能な限り自社ドメインで完結させる」ことです。

📋技術方針:ファーストパーティ化の要件

完全なファーストパーティ化を実現するには、以下の3要素を満たす必要があります。 

 

1.スクリプト配信元

gtm.jsなどの計測ライブラリをhttps://tag.example.comのような自社ドメインから配信する。


データ送信先

計測リクエストをhttps://analytics.example.comなど自社ドメインに集約する。


3.Cookieの発行

サーバーからHTTPレスポンスで Set-Cookieを返却する(JS発行CookieではなくHTTP Cookie)。これにより、ITPによる有効期間制限を回避する。

🔎ただし、Appleはサーバー発行Cookieを対象にする変更を将来的に行う可能性もあるため、「現状は長期保持可能だが将来の仕様変更リスクは残る」と理解しておくことが重要です。


✅これにより、トラッカーリストによる通信遮断のリスクを低減し、Cookieの有効期間制限も回避することが可能になります。

第3章:具体的な実装アーキテクチャの比較検討

 

私たちDataDigはこの深刻な課題に対し、複数の技術的アプローチを想定した上で、実際に検証環境を構築し、有効性のテストを実施しました。 ファーストパーティ化を実現するための具体的な実装アーキテクチャは、主に2つのアプローチに大別されます。

 

🔨選択肢A:CDN(リバースプロキシ)活用アプローチ

 

▼アーキテクチャ概要

CloudflareやAmazon CloudFrontなどのCDNをリバースプロキシとして設定。クライアントから自社サイトの特定Path(例: https://www.example.com/module)へのリクエストを受け、内部的にオリジンであるwww.googletagmanager.comへ転送し、レスポンスをクライアントに返します。

しかし、この構成はあくまでスクリプトを配信するだけであり、以下の要件は満たせません。

データ送信先の集約: 計測リクエストを自社ドメインで受信する機能はない。
サーバー発行Cookie: サーバーサイドでCookieを発行する仕組みはない。

 

▼評価

スクリプト読み込みブロックという点では有効な場合もありますが、URLの書き換えやパスルーティングなどCDN側での高度な設定が求められます。

また、Appleは既に「CNAME Cloaking」への対策を講じており、この手法も将来的にトラッキングと見なされるリスクを否定できません。さらに、計測データの受信ができないため別途サーバーサイドGTMが必要となり、結果としてアーキテクチャが複雑化するという課題があります。

 


🔨選択肢B:サーバーサイドGTM(SSGTM)+コンバージョンAPI活用アプローチ(推奨)

 

▼アーキテクチャ概要

SSGTMのサーバーコンテナに、自社サブドメイン(例: https://analytics.example.com)をマッピングします。このエンドポイントは、以下の3つの役割を担います。

 

1.スクリプト配信オリジン

Webサイトに設置するGTMスニペットの配信元URLを、www.googletagmanager.comからtag.example.comに変更することで、GTMライブラリをファーストパーティとして配信する。

 

2.データ受信エンドポイント

Webコンテナからの計測データ(例: /g/collectへのPOSTリクエスト)を受け取る。 

 

3.広告プラットフォームとの連携(CAPI)

受信データを正規化し、Meta CAPI、Google Ads Enhanced Conversions、TikTok Events API などの「コンバージョンAPI」に直接サーバから送信することで、ブラウザ規制を受けず、広告プラットフォームに正確なコンバージョンデータを届ける。

 

▼評価

単一のエンドポイントでスクリプト配信とデータ送受信の両方を実現でき、アーキテクチャがシンプルです。さらに、SSGTM内のGA4クライアント等を利用してHTTPレスポンスに Set-Cookie ヘッダーを付与すれば、ITPのCookie有効期間制限にも対応可能です。持続性と実装の容易性の観点から、最も推奨されるアプローチです。

 

▼総評

検証の結果、サーバーサイドGTMを中核とし、各広告プラットフォームが提供するコンバージョンAPI(CAPI)を組み合わせた特定のアーキテクチャが、Safariのトラッキング規制強化が進む環境下においても、安定的かつ高精度なデータ計測を実現する上で、現時点で最も有効なアプローチであると結論付けました。

 

▼このアプローチがもたらすメリット

😃安定した広告計測:ブラウザの規制に左右されず、サーバー間で安全にデータを送信できる。
📈精度向上:Webサイト以外のデータソース(CRMなど)も統合し、よりリッチなシグナルを送信できる。
🚀広告最適化強化:精度の高いデータを広告AIに学習させることで、CPA改善・ROAS向上が期待できる。
✔️データガバナンス:自社サーバーでデータを管理するため、プライバシー保護とデータ活用の両立が可能になる。

📚結論:次世代の計測基盤への移行は、待ったなしの経営課題です

 

近年のプライバシー保護強化の流れは、もはや単なる技術的な問題ではなく、広告ROIに直結する経営課題です。多くの企業でデータ計測が困難になることが想定される中、いち早く次世代の計測基盤を構築することが、今後の競争優位性を確立する上で不可欠となります。


結論として、今後の事業継続性と広告ROIを維持するためには、サーバーサイドGTMを中核に据え、各広告プラットフォームの「コンバージョンAPI」と組み合わせた「完全ファーストパーティの計測基盤」へ移行することを推奨します。


私たちは今回の検証で得られた知見をもとに、お客様のビジネス状況やシステム環境に合わせた最適な計測アーキテクチャの設計・実装を支援します。

 

「自社に最適なアーキテクチャについて、具体的な提案が欲しい」

「本件に関する技術的な詳細や、実装支援について相談したい」

「データ活用の重要性は理解しているが、何から手をつければいいか分からない」

 

もし、こうした課題をお持ちでしたら、ぜひ一度DataDigにご相談ください。

まずは課題整理の壁打ち相手として、お気軽にご活用ください。 

 

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DataDigはデータに基づいた戦略的なマーケティングへの変革をワンストップで実現し、お客様のビジネスを成功に導く、最適なデータ活用戦略を共に描きます。


[注釈]
[1] 参考:WWDC25公式サイト(https://developer.apple.com/jp/wwdc25/)


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